『わたしはピアノ』 てるてるぼうず さく
わたしは ピアノ
わたしは やさしい 声を出します
わたしは やさしく 歌います
わたしを やさしく ひいてくれる こどもがいました
わたしは しあわせでした
わたしの ねいろに わらってくれました
わたしも わらいました
わたしは しあわせでした
そのこも しあわせでした
しかし その幸せは 続きませんでした
ある日 わたしの頭に 「ばくだん」が おとされたのです
原子爆弾です
とてつもない風と熱が わたしたちを のみこみました
こどもや おとな たくさんのひとが ふきとばされました
そして わたしも
わたしは 声を 失いました
しかし たくさんのひとは いのちを 失いました
わたしは なきました
でも 声はでません
こころと漆黒の体に傷だけがのこりました
わたしは 光を うしないました
漆黒の心が 続きました
沈黙の時間(とき)だけが 続きました
ある日
わたしに 気付いてくれた人がいます
わたしに 声を取り戻してくれた人がいます
かんたんではありませんでしたが
わたしは 声がもどりました
しかし たくさんの いのちは もどりませんでした
わたしは「ひばくピアノ」とよばれるようになりました
わたしは 叫びます 戦争の愚かさを
わたしは 歌います 平和のありがたさを
わたしの こえを きいてください
世界中に ひろがれ
わたしのこえよ
世界中に ひろがれ
いのちの尊さを 平和の大切さを
どうか わたしの声を 聞いてください
わたしは ピアノ
わたしは 「ひばくピアノ」
2010年11月12日 宝田院・被爆ピアノによる音楽法要「報恩講」にあたり釋明誠 つくる